英語の発音に苦手意識を持つ人はとても多く、特に日本人にとっては「RとL」「th」「v」「f」など、母語にない音を再現することが難しいと感じることが多いものです。しかも、学校教育では文法やリーディング中心だったため、発音をしっかり練習する機会が少なかったという背景もあります。
しかし、発音はセンスではなく「正しい方法で練習すれば誰でも改善できるスキル」です。この記事では、英語の発音が苦手な人が抱える典型的な悩みを解き明かしながら、段階的に改善していくための具体的なステップを紹介します。録音や音声認識アプリを活用したセルフトレーニング法、日本人が特に間違いやすい音の修正ポイントなども詳しく解説します。
これから紹介する方法を実践すれば、「通じない」「聞き返される」といった不安が次第に減り、自信を持って英語を話せるようになるでしょう。ではまず、なぜ多くの日本人が英語の発音を苦手とするのか、その根本的な理由を理解していきましょう。
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なぜ日本人は英語の発音が苦手なのか
母語の音体系が大きく異なるため
日本語の音体系は非常にシンプルで、母音が5種類、子音が限られた組み合わせしかありません。一方で英語には約20の母音と25以上の子音があり、音の幅が圧倒的に広いのです。そのため、日本人が英語を聞いたときに「似た音」を日本語の音に置き換えて認識してしまい、正しい発音との差が生まれてしまいます。
たとえば、「light」と「right」の区別は日本語には存在しません。そのため、どちらも「ライト」と発音してしまう傾向があります。つまり、音の聞き分け段階から誤差が生じており、それが発音の苦手意識につながっているのです。なぜなら、耳で区別できない音は口でも再現しづらいからです。
したがって、発音改善の第一歩は「耳のチューニング」を行うことです。つまり、聞き分け能力を鍛え、英語の音を日本語ではなく英語の音として認識する習慣をつけることが重要です。
日本の英語教育が発音練習を重視していない
日本の英語教育では、文法やリーディング・ライティングを中心とした指導が長年続いてきました。そのため、発音に焦点を当てた授業は少なく、実際に声に出して話す訓練を受けてこなかった人が多いのが現実です。これにより、英語を「頭で理解する」習慣はあっても、「口で再現する」感覚が身についていません。
また、発音練習といっても教師自身がネイティブの発音を十分に再現できない場合もあり、正しい口の形や舌の位置を学べないまま成長してしまうケースもあります。それでも、今は動画教材やAI発音アプリなどの技術が進化しており、誰でも本場の音を手軽に学べる時代です。つまり、教育の限界を個人の努力で超えられる環境が整っているということです。
この状況を逆手にとり、自分のペースで発音を矯正していくことが、現代の学習者にとって最も現実的で効果的な方法なのです。
「恥ずかしさ」や心理的なブロックが原因
もう一つの大きな要因は、心理的なブロックです。日本人は「間違えるのが恥ずかしい」「カタカナっぽい発音を笑われたくない」と感じる傾向があります。その結果、英語を話す場面で無意識に声が小さくなったり、発音を控えめにしてしまうのです。これが上達を妨げる最大の壁といっても過言ではありません。
実際、英語圏では多少発音が違っても相手に伝われば問題ありません。つまり、完璧を求めるよりも「相手に伝わる音」を目指すほうが現実的であり、結果的に上達も早くなります。発音の上達には、正しい練習と同じくらい「間違えてもいい」というマインドセットの切り替えが大切なのです。
そのうえで、心理的な壁を乗り越えるためには「自分の声を客観的に聞く」ことが効果的です。録音して自分の発音を確認するだけでも、上達への気づきが得られるでしょう。
日本人が特に苦手な英語の発音と改善法
RとLの区別をマスターするコツ
日本人にとって最も難しいとされるのが「R」と「L」の発音です。どちらも日本語の「ラ行」に近い音に聞こえるため、区別がつきにくいのです。まず、「R」は舌を上あごにつけず、軽く後ろに引くようにして発音します。口の中に少し空間を作り、舌の先をどこにも触れさせないのがポイントです。言い換えると、空気を後方に流すように響かせる感覚です。
一方、「L」は舌の先を上の前歯の裏にしっかり当てて発音します。このとき、息を外に出しながら短く音を切ると自然な発音になります。たとえば「light」と「right」を交互に練習し、録音して聞き比べることで、音の違いを意識的に捉えられるようになります。つまり、RとLは「舌の位置」と「息の流れ」を変えるだけで、誰でも確実に区別できるようになるのです。
さらに効果的なのは「RからLに滑らかに移動する練習」です。たとえば「real」「really」など、両方の音が含まれる単語を繰り返し練習すると、自然に口の動きが整っていきます。そのうえで、ネイティブの音声を模倣しながら録音・確認することで、微妙な違いを体得できるでしょう。
「th」の発音を正しく出す練習法
英語の「th」は日本語に存在しないため、多くの人が「s」や「z」の音で代用してしまいます。たとえば「think」が「シンク」、「this」が「ジス」となってしまうケースです。正しい発音を身につけるためには、まず舌先を上の前歯と下の前歯の間に軽く出し、空気を「スーッ」と通すことを意識します。
このとき、舌を強く噛んではいけません。軽く触れる程度で構いません。また、声を出す「th(ð)」と声を出さない「th(θ)」の違いにも注意が必要です。前者は「this」「that」などの単語に多く、後者は「think」「thank」などに使われます。つまり、声帯を震わせるかどうかで音が変わるのです。
練習のコツは、鏡を見ながら舌の位置を確認することです。自分の舌がしっかり歯の間に出ているかを確認しながら、10回ずつゆっくり発音すると感覚がつかめてきます。そのうえで、実際の文章に取り入れて練習すると、日常会話でも自然に「th」の音が出せるようになります。
「v」と「f」の音の違いを意識する
「v」と「f」も日本人が苦手とする代表的な音のひとつです。どちらも唇と歯を使いますが、違いは「声を出すかどうか」にあります。「v」は声を出しながら下唇を上の前歯に軽く当てて発音します。一方、「f」は声を出さず、息だけを外に出すように発音します。つまり、「v」は振動があり、「f」は無声音ということです。
たとえば「fan(扇風機)」と「van(バン)」を交互に練習してみましょう。録音して聞くと、自分では気づかない微妙な違いが分かるようになります。さらに、発音アプリを使ってAI採点を受けると、どちらの音が近いかを客観的に確認できるため、改善のスピードが一気に上がります。
練習を続ける際は、単語単位ではなくフレーズ全体で練習することも大切です。たとえば「very funny」「five flowers」といった組み合わせを繰り返すことで、口の動きがスムーズになり、発音が自然に定着していきます。そのうえで、息の強さや声の有無を意識すると、より英語らしい発音に近づくでしょう。
発音を改善するための効果的な練習ステップ
ステップ①:正しい音を「聞き分ける」耳をつくる
発音を改善するうえで最初に取り組むべきは「聞き分け力」の強化です。なぜなら、耳が正しい音を認識できないと、自分の口で再現することもできないからです。つまり、聞く力は発音の基礎であり、すべての出発点なのです。
効果的な方法は、ネイティブの発音を繰り返し聞きながら「どの音が違うのか」を意識することです。たとえば、YouTubeで「minimal pairs(最小ペア)」という動画を探し、「light」「right」や「fan」「van」などの微妙な違いを集中して聴き取る練習を行います。初めは違いが分からなくても、何度も聞いているうちに脳が音の違いを認識できるようになります。
さらに、音声認識機能のあるアプリを使い、ネイティブが話す音声と自分の声を比較してみましょう。英語学習アプリの中には、AIが発音精度を数値化してフィードバックしてくれるものもあります。このプロセスを通じて、自分の「聞こえ方」と「実際の音」のギャップを埋めることができるのです。
ステップ②:口の形と舌の位置を徹底的に意識する
次に意識すべきは「口の形」と「舌の位置」です。発音は筋肉運動であり、感覚に頼るだけでは身につきません。つまり、意識的に筋肉を動かして、正しい位置を再現することが必要です。たとえば「R」は舌を後ろに引き、「L」は歯の裏に当てる、「th」は舌を軽く出す、といったように、それぞれの音ごとに動作が異なります。
鏡を見ながら自分の口の形を確認するのが効果的です。特に「口が動いていない」と指摘される人は、思っている以上に筋肉を使っていません。英語の発音では、口を大きく動かすことが自然であり、表情筋の可動域を広げることが上達の近道です。さらに、動画でネイティブの口の動きを観察し、自分の動作と見比べることで改善点を明確にできます。
また、鏡練習に加えてスマートフォンで録画するのもおすすめです。自分の発音を「耳」と「目」の両方から確認できるため、修正すべき箇所がより具体的に見えてきます。そのうえで、1日10分でも継続することが大切です。
ステップ③:録音・フィードバックを繰り返す自己改善サイクル
発音を本当に上達させるには、「録音→分析→再練習」のサイクルを継続することが不可欠です。録音は単なる確認ではなく、自分の成長を“見える化”するための最強ツールです。たとえば、1週間おきに同じフレーズを録音して聞き比べると、発音の精度や音の滑らかさが確実に変わっていくのを実感できるでしょう。
また、アプリやオンライン英会話の発音診断機能を活用するのも効果的です。AIが音声波形を分析し、「舌の位置」「口の開き」「強弱のバランス」まで数値化してくれるため、独学でも正しい方向に進んでいるか確認できます。つまり、自己流ではなく“科学的トレーニング”として発音を磨けるのです。
さらに、発音練習を日常会話の中に組み込むことも重要です。たとえば、映画やドラマのセリフを真似する「シャドーイング」や「オーバーラッピング」を行うと、自然なリズムやイントネーションも同時に身につきます。これにより、単なる単語発音ではなく、会話全体での発音力が大きく向上していくのです。
実践で通じる発音を身につけるコツ
完璧より「伝わる発音」を目指す
発音を練習していると、多くの人が「ネイティブのように話したい」という目標を掲げます。しかし、実際のコミュニケーションでは「完璧」よりも「伝わること」が重要です。なぜなら、英語は世界中で使われる言語であり、発音に多少の訛りがあっても意思疎通ができれば十分だからです。つまり、目的は「正確さ」よりも「伝達力」にあります。
たとえば、海外で働くビジネスパーソンの多くは、母語のアクセントを持ちながらも堂々と話しています。逆に、日本人の多くは正しい発音を意識しすぎて、声が小さくなったり、スピードが不自然になったりします。その結果、かえって伝わりにくくなってしまうのです。だからこそ、「間違ってもいいからしっかり発音する」ことが、実践で最も役立つスキルになります。
また、リスニングの観点でも、自分の発音が明確になるほど聞き取りも上達します。発音とリスニングは表裏一体であり、話す力を伸ばせば聞く力も自然に高まるのです。完璧さを求めるよりも「通じる音を出せているか」を軸に練習することが、最短の上達ルートといえるでしょう。
英語の「リズム」と「イントネーション」を意識する
通じる発音の鍵は、単語単位ではなく「リズム」と「イントネーション」にあります。たとえば、「Can you help me?」という文を平坦に読むと機械的に聞こえますが、強弱をつけて「Can you help me?」と発音すると、ぐっと自然な響きになります。つまり、音の高低や強弱で「英語らしさ」を作るのです。
英語は「ストレス・タイムド・ランゲージ(強勢拍リズム)」と呼ばれ、強調される単語にリズムの拍が置かれます。これに対して日本語は「モーラ・タイムド・ランゲージ(拍リズム)」で、音がすべて均等です。その違いが、英語が「音楽的」に聞こえる理由です。だからこそ、単語の発音練習だけでなく「文の流れ」で発音を身につけることが大切なのです。
おすすめの練習法は「シャドーイング」です。英語ニュースやTEDスピーチを聞きながら、1~2語遅れて声を出すことで、音のリズムを身体に刻み込めます。さらに「オーバーラッピング(同時発音)」を行うと、発音とリズムが一体化し、実践で通じる英語が話せるようになります。
リアルな会話で「使って覚える」環境をつくる
どんなに練習しても、実際に英語を使わなければ発音は定着しません。つまり、アウトプットの場を増やすことが上達の決め手です。オンライン英会話を利用すれば、毎日10分でもネイティブと話す機会を持てますし、発音のフィードバックもリアルタイムでもらえます。そのうえ、外国人と話すことで「伝わる・伝わらない」の実感を得られるため、発音練習の方向性が明確になります。
また、英会話以外でも実践の場はたくさんあります。たとえば、SNSで英語日記を音声付きで投稿したり、発音学習コミュニティに参加したりするのも良い方法です。録音を共有してアドバイスをもらうことで、自分では気づかない改善点を見つけられます。つまり、学習を「一人で完結させない」ことがポイントなのです。
さらに、英語を話す環境を「日常化」することも重要です。映画を観るときにセリフを口に出す、スマートスピーカーに話しかける、発音練習を朝のルーティンに組み込むなど、日常生活の中で自然に英語を使う時間を増やしましょう。継続こそが最大の効果を生むのです。
発音改善を継続するためのモチベーション維持法
小さな成功体験を積み重ねる
発音の改善は短期間で劇的な変化が現れるものではありません。そのため、途中で「自分には無理かも」と感じてしまう人も少なくありません。けれども、モチベーションを維持するための鍵は「小さな成功体験」を積み重ねることにあります。つまり、大きな成果ではなく、日々の成長を自覚することが大切なのです。
たとえば、「録音した自分の声が前より明瞭になった」「アプリの採点が5点上がった」「ネイティブに聞き返されなかった」など、どんな小さなことでも構いません。それらを日記やノートに記録しておくと、自分の成長が“見える化”され、継続のモチベーションにつながります。
さらに、週に一度、自分の発音を録音して比較する「成長チェック日」を設けると効果的です。過去の音声と今の音声を聞き比べることで、変化を実感でき、学習意欲が自然と高まります。こうした小さな達成感が、長期的なモチベーションの源になるのです。
目的を明確にして学習を習慣化する
モチベーションを保つもう一つの秘訣は、学習の目的を明確にすることです。「発音を良くしたい」という漠然とした目標では続きません。たとえば「海外旅行で自信を持って注文できるようになる」「英語面接で発音を褒められるようになる」など、具体的なゴールを設定しましょう。
また、学習を日常の一部として習慣化することも重要です。発音練習を「やる気があるときだけ行う」のではなく、「歯磨きのように毎日欠かさず行う」ものにすることが理想です。朝の5分間や寝る前の10分など、特定の時間を決めると継続しやすくなります。
さらに、習慣化には「視覚化ツール」を活用するのもおすすめです。カレンダーにチェックをつけたり、学習アプリの連続記録機能を利用したりすると、努力が積み上がっている実感を得やすくなります。つまり、継続の秘訣は「やる気」ではなく「仕組み化」にあるのです。
仲間やメンターと一緒に取り組む
一人で学習していると、どうしても孤独を感じたり、途中で壁にぶつかって挫折しやすくなります。だからこそ、同じ目標を持つ仲間や、経験豊富なメンターの存在が大きな支えになります。オンライン英会話やSNSの英語学習コミュニティでは、発音改善に取り組む人たちが情報を交換し合っています。
仲間がいると、自分の努力を共有でき、他の人の上達を見ることで刺激を受けられます。また、メンターや講師から具体的なアドバイスをもらうことで、自分では気づかない発音のクセや改善点を見つけることができます。そのうえ、励まし合える関係があることで、モチベーションが安定し、学習を長く続けられるのです。
さらに、SNSで進捗を発信するのも効果的です。「1日1回発音練習を投稿する」「1週間で覚えた発音をまとめて発表する」などの行動を通して、周囲からのリアクションを受け取ることが、自信とやる気につながります。つまり、人とのつながりが、発音改善を継続する最大のエネルギー源になるのです。
英語発音改善のまとめと今後のステップ
発音は「才能」ではなく「習慣」で上達する
英語の発音が苦手な人の多くは、「自分にはセンスがない」と思い込みがちです。しかし、実際には発音は生まれつきの能力ではなく、正しい練習法と継続によって確実に上達するスキルです。つまり、才能ではなく習慣がカギなのです。毎日5分でも構いません。耳を慣らし、口を動かすことを続けていけば、半年後には驚くほど自然な英語が話せるようになります。
また、完璧を目指す必要はありません。大切なのは「相手に伝わる音を出すこと」です。ネイティブのように話すよりも、あなたの言葉で明確に意図を伝えることが最も重要です。そのうえで、自分の発音を分析しながら改善を重ねる姿勢こそが、本当の意味での“英語コミュニケーション力”を育てるのです。
つまり、発音上達の道は誰にでも開かれています。日々の積み重ねが、確かな自信へとつながるのです。
自分に合った学習ツールを活用する
現在は発音改善に役立つツールが数多く存在します。AIを搭載した発音矯正アプリ、YouTubeの無料レッスン動画、オンライン英会話の発音チェック機能などを活用すれば、自宅でも本格的な練習が可能です。特におすすめなのは、録音機能付きのアプリを使って「聞く・話す・比べる」を繰り返す学習法です。
さらに、ネイティブの発音を模倣する際は、「単語」だけでなく「フレーズ」や「文」で練習するのが効果的です。英語の音は前後の単語とつながって変化するため、文脈の中で練習するほうが実践的です。その結果、リスニング力や会話のテンポ感も自然に向上していきます。
ただし、ツールはあくまで“補助”。最も重要なのは「自分で声を出し、聞き直す」というシンプルな習慣です。つまり、道具に頼るよりも、自分自身の感覚と努力が成果を決定づけるのです。
次のステップ:日常の中で英語を「使う」
ここまで発音改善の基本と練習法を紹介してきましたが、上達の最終段階は「日常生活で英語を使うこと」です。英語を実際に使う環境に身を置くことで、練習で培った発音が自然な形で定着します。たとえば、オンライン英会話を継続したり、英語コミュニティに参加したり、英語ニュースを音読するなどの習慣を取り入れてみましょう。
また、自分の発音を発信することも有効です。SNSで学習記録を共有したり、発音練習の動画を投稿したりすることで、周囲からの反応がモチベーションにつながります。そのうえ、他の学習者との交流によって、発音への新しい気づきや刺激も得られるでしょう。
英語の発音を改善する道は長く感じるかもしれません。しかし、一歩ずつ続けていけば、確実に結果は現れます。今日からほんの数分、自分の声を録音してみましょう。その一歩が、あなたの英語人生を大きく変える始まりになります。